生物・化学戦(BC)の対処法(化学・生物)
生物・化学戦(BC)の対処法(化学)
自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之
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種類 |
特性 |
症状 |
神経剤 |
- G剤
- タブン(GA)
サリン(GB)
ソマン(GD)
- V剤
- VX(最も強力)
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- 有機リン化合物
- 空気より重い
- 神経剤は最も毒性が強い
- サリン
- 無色液体、無臭で、揮発が高い
- VX
- 重油に似てゆっくり揮発し最も強力(致死量4mg)
アセチルコリンエステラーゼ抑制による神経の情報伝達遮断
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- 症状は曝露の経路(蒸気/液体)と容量に依存し、縮瞳が特徴的
- 蒸気曝露では、縮瞳、鼻汁、流涙、軽度の呼吸困難
- 目の奥の痛み
- 前頭部の鈍痛も特徴的
- 液剤曝露では局所の発汗、虚脱感、筋攣縮
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びらん剤 |
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- 蒸留マスタード(遷延性)
- からし臭、油様液体、黄色。
室内では、液体が最も危険
- ルイサイト
- ゼラニウム臭、接触後直ちに疼痛
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- 皮膚の紅斑・水泡(黄色いドーム状)
- 眼(結膜炎・角膜障害)
- 気管支炎症状
- 皮膚紅斑・眼症状(疼痛)
- 気管支炎から肺水腫
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窒息剤 |
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- 呼吸器系に作用し、数時間後に急激な症状(咽頭痙攣/肺水腫)出現
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血液剤 |
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- 空気より重い
- アーモンド臭(遺伝的に1/2人は検出不可)
- 無色
- 呼吸にて、体内吸収
- 体内の酸素摂取障害
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- 低濃度では、めまい、嘔気、嘔吐、頭痛
- 重症では、けいれん、呼吸困難(チアノーゼを示さない)
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無傷害化学剤 |
- 催涙/嘔吐剤
- CS/CN・DA/DM
- 無能力化剤
- LSD、大麻、BZ
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- 生理的効果により人/動物を一時的に無力化する物質
- 催涙剤(CS/CN)・くしゃみ剤(DA/DM)
- CS
- 眼の刺激/疼痛、鼻水、唾液過多、咳/くしゃみ。
死因は、肺浮腫/出血(12時間経過後)。
除染には、水または石鹸[出来れば、6%重炭酸ナトリウム]
中枢神経刺激・抑制剤。
- BZ
- 抗コリン剤、中枢神経作用がより強い。
意識低下、記憶障害
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化学剤の要点化学剤曝露(自己チェックリスト)
化学/生物剤関連疾患の診断アルゴリズム
文献
生物・化学戦(BC)の対処法(生物)
自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之
カテゴリーA
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種類 |
特性 |
症状 |
天然痘(Smallpox) |
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- 潜伏期:7〜17日間
- 自然界での宿主はヒトのみ。
- ヒトからヒトへの空気感染。
- 水痘との鑑別が重要で、水痘では異なった段階の発疹が混在。
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- 前駆症状は倦怠感、発熱、頭痛。
- 特徴的発疹(四肢に同時発生)紅斑、丘疹、水泡、膿疱、結痂、落屑の順で、1〜2週間で痂皮化。
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炭疽(Anthrax) |
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- 潜伏期:2〜6日
- 吸入(肺)・皮膚・腸の3型に分類。
- 人から人への感染はない。
- 無治療では、致死率は90%以上にもおよぶ。
- エアロゾルでは感染力が長時間持続し散布も容易。
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- 初期症状は鼻閉感、関節痛、易疲労、空咳(感冒症状と類似)
- 発症2〜3日後に咳の重積発作(呼吸困難)、チアノーゼや痙攣出現。突然死。
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ペスト(Plague) |
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- 潜伏期:2〜6日
- 腺・敗血・肺ペストの3型に大別。
- ペスト感染ネズミに吸着したノミに刺され感染。
- 肺ペストは飛沫感染(人から人)
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- 腺ペスト
- リンパ節、腫脹、化膿、敗血症、高熱、肺
- ペスト
- 高熱、咳、漿液性血痰
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ボツリヌス症(Botulism) |
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- 潜伏期:約18時間
- 汚染食品の中で産生する強力な神経毒によって発症。
- 意識障害がないのが特徴。
- ヒトからヒトへの感染はない。
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- 軽い消化器症状に続き眼麻痺(視力低下、複視、眼瞼下垂)
- 球麻痺(発語障害、嚥下障害、呼吸困難)
- 分泌障害(唾液、汗、涙)
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野兎病(Tularemia) |
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- 潜伏期:2〜10日
- ダニや蚊、野うさぎなどから人に感染。
- 感染力は強いがヒトからヒトへの感染はない。
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- 侵入経路/菌株により多彩な臨床症状。
- 数週間の寒気や吐き気、頭痛、発熱。
- 無治療時、症状は2〜4週間、数カ月続くこともある。
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ウイルス性出血熱 |
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- 初期症状としては発熱、悪寒、結膜炎、皮膚の点状出血がある。
- 数日後に状態は急激に悪化し、咽頭炎、激しい嘔気/嘔吐、吐血、下血を呈する。
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カテゴリーB
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種類 |
特性 |
症状 |
Q熱 |
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- 発熱、筋肉痛、頭痛、悪寒で、約1/4の患者に咳や胸膜性の胸痛がみられる。
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ブルセラ症 |
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- 潜伏期:3日から3週間
- ブルセラは高率に感染を起こすが症状は非特異的で人それぞれで異なる。
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- 不顕性感染も多い。
- 全身性の慢性感染症であるが、ヒトでは急性期症状も著明である。
- 悪寒、発熱、頭痛、発汗、関節・筋肉痛、衰弱感を呈する。
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鼻疽 |
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- 潜伏期:恐らく1〜5日
- 吸入後は10〜14日とされている。
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- 症状は敗血症に伴う症状と激しい多発性肺膿瘍、急性膿瘍病巣、あるいは慢性の進行性皮下膿瘍を呈する。
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ベネズエラ馬脳炎 |
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- 突然の発熱、悪寒、強い頭痛、筋肉痛、羞明で発症。嘔気、嘔吐、咽頭痛も起こることがある。
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生物毒 |
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リシン |
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- 毒素はエアロゾル吸入か経口摂取により、蛋白の同化を妨げ直接細胞に作用し組織壊死を起こす。
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ブドウ球菌エンテロトキシンB |
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- 潜伏期:吸入後3〜12時間
- 5日間続き咳は1ヶ月持続することもある。
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- 発熱、悪寒、体の痛み、空咳を呈する。息切れと胸痛も伴う。
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トリコセシンマイコトキシン |
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- マスタード類(特にルイサイト)に、類似した症状が認められ、鑑別に留意する。
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サキシトキシン(麻痺性貝毒) |
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腸チフス |
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- 第1病期には段階的に体温が上昇し、39〜40℃に達する。
- 第2病期は極期であり、40℃代の稽留熱、下痢または便秘を呈する。
- 3主徴である比較的徐脈、バラ疹、脾腫が出現する。
- 重症な場合には意識障害も引き起こす。
- 第3病期には徐々に解熱し、弛張熱、腸出血をきたす。
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腸管出血性大腸菌感染症 |
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- 潜伏期:2〜5日が最も多いが、1週間程度でも起こる。
- 排菌は1週間を過ぎると明らかに減少する。
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- 下痢から血便は1〜5日目
- HUS発症は2〜8日目、血便からHUS発症は1〜4日目が多い。水様下痢から粘血便、鮮血に近い便まで見られ、嘔気、嘔吐、腹痛をともなう。
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コレラ |
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- 突然の腹痛、嘔吐、悪寒とともに、主症状は下痢である。
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クリプトスポリジウム症 |
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- 健常者が罹患した場合の臨床症状は、下痢(主に水様下痢)、腹痛、倦怠感、食欲低下、悪心などが挙げられ、軽度の発熱を伴う例もある。
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生物剤および関連疾患の特性
CDCによる生物テロに使用可能な生物剤/関連疾患のカテゴリー分類
付記
文献
生物・化学戦(BC)および放射能の例題
生物・化学戦(BC)および放射能の例題を作成いたしました。興味ある方、詳しく知りたい方は荒井までご連絡ください。