自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之
生物毒はおそらくすべての生物剤の中で、最も致死的である。毒素はヒトからヒトへは感染しないが、神経剤の中で最も強力なVXの15000倍も毒性が強い。このため、局地的なテロ攻撃では使用される可能性がある。数十の生物毒があるが、テロ対処で重要なのは次の5つである。
すなわちボツリヌス菌毒素、リシン、ブドウ球菌腸毒素B(SEB)、トリコセシンマイコトキシン(T2)、サキシトキシン(麻痺性貝毒)である(ボツリヌス症はカテゴリーAで既述)。
生物毒の特性
略号 | 名称 | 化学名 | 物理的状態 | 発現性 | |
生物毒 | XA | ボツリヌスA | タンパク質 | ボツリヌス菌 | 安定性 |
WA | リシン | タンパク質 | ヒマ科植物種子 | 60〜70℃で液体不安定、100℃で乾燥物、不安定 | |
TZ | サリトキシン | 非タンパク質 | 植物プランクトン | 比較的安定1年近 | |
PG | 黄色ブドウ球菌 | 単純なタンパク質 | スタフィロコッカス アウレウス | - | |
黄色い雨(T2、DAS、 ノバレノール、デオキシニパレノール) | 真菌類毒素 | - |
生物毒は、動植物や菌類が生産した毒素の化学物質。
無生物であり、散布後に増殖・成長することはない。熱や衝撃に弱く、散布方法が困難である。
リシン *: 致死量は1.5µg、ストリキニ-ネの2,500倍毒性。サキシトキシン#:非タンパク質