鼻疽(Burkholderia mallei)

自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之

鼻疽(Burkholderia mallei)

概要

鼻疽はBurkhorderia(pseudomonas)malleiによって起こされる 人畜(獣)共通伝染病である。B.malleiは非運動型 、好気性の、グラム陰性桿菌である。16srRNAの相同性に基づいて新しくPseudomonas 属からBurkholderia属に移行された。馬 、ロバとラバが主要な自然宿主である。馬での感染は、全身症状を伴った化膿性肺炎あるいは進行性皮下潰瘍を伴う結節性のリンパ節炎(皮疽)を提示する。 人への伝播は感染している馬の分泌物の吸入、経口、あるいは粘膜接触によって起こると推測される。羊、やぎ、猫、犬も感染するが、宿主としての危険性は恐らく低い。生物テロでの攻撃手段はエアロゾルが最も考えられる。
1900年代初期の間に、B.malleiの培養から抽出されたタンパク質(マレイン)が北アメリカと西ヨーロッパで皮膚試験薬として馬に使用された。この試験薬によって感染動物の屠殺処分がこの地域での病気の封じ込めに効果的であった。現在、鼻疽はアジア、アフリカと南アメリカで散発的に起こる。

症状

潜伏期は恐らく1〜5日で、吸入後は10〜14日とされている。症状は敗血症に伴う症状と激しい多発性肺膿瘍、急性膿瘍病巣、あるいは慢性の進行性皮下膿瘍を呈する。これらの臨床的兆候は個々の患者にしばしば合併する。B.malleiは、マッコンキー培地で容易に培養可能である。血清反応試験は、未だ利用可能ではない。

治療

症状や重症度によって、治療が変化する。スルファジン及びアモキシリン/クラブラン酸の投与が第1選択薬である。患者は30日にわたって3剤で治療されるべきで、その後どれか単剤での60〜150日の維持療法が推奨される。キノロン、セフタジジム、イミペネム、テトラサイクリンでも効果が認められている。予防は現在時点では、有効なものはない。患者取り扱いはスタンダードプレコーションに従う。