生物剤および関連疾患の特性

自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之

生物剤および関連疾患の特性

多くの細菌・ウイルス・リッケチア・毒素が、生物テロに利用可能と考えられている。生物剤は次のように分類される。

  1. 感染性微生物:炭疽菌、ブルセラ症、ペスト、Q熱、ツラレミア(野兎病)、天然痘、ウイルス脳炎、ウイルス性出血熱など
  2. 細菌産生毒:ブドウ球菌腸毒素B、ボツリヌス毒素など
  3. 植物毒:リシン、T-2マイコトキシンなど

これらの微生物の特色は大きく異なるが、多くの生物剤がエアロゾル粒子(1〜5µ)を拡散する共通の特色を有している。特に生物剤としては天然痘・炭疽菌が、致死率が高く、エアロゾル状態で安定、大量生産が可能などの理由で最も恐れられている。
生物テロでは秘匿的曝露時の迅速・的確な把握が重要であり、そのポイントはテロによるのか自然発症によるのかの判断である。『特定の地域で異例の数の患 者/死者や死んだ家畜が出た場合』では生物剤テロを考え、症候診断や治療を進めなければならない(図1)。生物剤テロの最初の兆候は患者発症のことが多 く、患者の症状は多彩で潜伏期間も数時間から数週間と様々で、生物剤曝露の兆候出現は常に遅れがちとなる。このため医療関係者だけでなく消防・警察・行政 担当者は、初期対応の困難さを念頭に置き、日頃から生物剤関連疾患に精通しなければならない。
今回、米国疾病管理予防センター(the Centers for disease Control and Prevention, CDC)による生物テロに使用可能な生物剤/関連疾患のカテゴリー分類にしたがって、カテゴリーA/Bについて解説する。

生物剤関連疾患の診断アルゴリズム