自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之
疾患 | ヒト-ヒト 感染力 |
感染成立量 (エアロゾル) |
潜伏期 | 有病期間 | 致死率 | 病原体の安定性 |
天然痘 | 高い | 推定:少数 (10〜100 Organisms) |
7〜17日 (平均12日) |
4週間 | 高 (ワクチン未接種時には35%) |
安定性は高い |
吸入(肺)炭疽 | なし | 8000〜50000 Spores | 1〜6日 | 3〜5日(未治療で致死的) | 高 (40〜80%) |
安定性は高く、土壌中では40年以上も生存 |
肺ペスト | 高い | 10〜500 Organisms | 2〜3日 | 1〜6日(通常致死的) | 発症12時間以後では高 (肺では100%) |
土壌中で1年以内・生体内で270日生存 |
野兎病 | なし | 10〜50 Organisms | 2〜10日 (平均3〜5日) |
2〜4週間 | 未治療で中等度(30%) | 湿土や他の媒体中で数ヶ月間生存 |
野兎病 | なし | 10〜50 Organisms | 2〜10日 (平均3〜5日) |
2〜4週間 | 未治療で中等度(30%) | 湿土や他の媒体中で数ヶ月間生存 |
ボツリヌス | なし | A型のLD50 0.01µg/kg |
1〜5日 | 24〜72時間で死亡(数ヶ月) | 呼吸管理なしでは高(A型:60〜70%) | 水中・食品中で、数週間生存 | ウイルス性出血熱 | 中等度 | 1〜10 Organisms | 4〜21日 | 7〜16日で死亡 | エボラザイール株高 エボラスーダン株中 |
一般的には不安定だが、剤種による |
(米陸軍 生物剤関連疾患の医療対処 Ver1.4, 2001, 一部改編)
剤種 | 顔面・鼻腔スワブ※ | 血液培養 | スメア | 急性期&回復期の血清 | 便 | 尿 | その他 | 検査の Gold Standard |
天然痘 | + (PCR,分離用) |
− | − | + | − | − | 皮膚病変 (電顕・病理) |
ウイルス分離・FA・NT |
炭疽 | + | + | 胸水・髄液リンパ節 | + | + | − | 切創・病変部の吸引物 | FA・標準微生物学 |
肺ペスト | + | + | 喀痰 | + | − | − | リンパ節吸引・髄液・喀 | FA・標準微生物学 |
野兎病 | + | + | + (☆) |
+ | − | − | (抗原検出) | FA・標準微生物学 |
ボツリヌス | + (PCR,分離用) |
− | − | + | − | − | 皮膚病変 (電顕・病理) |
ウイルス分離・FA・NT |
ウイルス性出血熱 | + | + (★) |
− | + | − | − | 肝 | ウイルス分離・NT・(ELISA) |
※18〜24時間以内
△血中よりリケッチア分離可能
☆リンパ節の蛍光抗体検査が有用・グラム染色はあまり有用でない
★適切な血液・咽頭スワブからウイルス分離
(USAMRIID’s Medical Management of Biological Casualties Handbook 第4版,2001 より一部改編)
症状 | その他の症状・症候 | 可能性のある原因微生物(剤) |
発熱 | 多数(毒素の可能性は小さい) | |
咽頭炎 | 咽頭痛、嚥下障害、発熱を伴うことあり | 毒素(ボツリヌス、リシン、T2) エボラ/マールブルク出血熱、ラッサ熱、野兎病 |
感冒様症状 | 発熱、悪寒、倦怠感、頭痛、筋(肉)痛、眼痛、知覚過敏 | ブルセラ症、チックングンニャ熱、デング熱、インフルエンザ、早期の吸入炭疽、Q熱、リフトバレー熱、ベネズエラ馬脳炎 |
脳炎・中枢神経障害(脳症) | 発熱を伴うことあり | アルゼンチン出血熱、ボリビア出血熱、東部馬脳炎、西部馬脳炎、ベネズエラ馬脳炎、ラッサ熱、リフトバレー熱、ペスト、オウム病、ロシア春夏脳炎 |
(米陸軍 生物剤関連疾患の医療対処 Ver1.4, 2001, 一部改編)
症状 | その他の症状・症候 | 可能性のある原因微生物(剤) |
弛緩性麻痺 | 知覚異常、弛緩性脱力、中枢神経異常 | 毒素(ボツリヌス、サキシトシン、テトロドトキシン) |
乏尿性腎不全 | 発熱を伴う | ハンタウイルス性出血熱、黄熱病、オウム病(まれ) |
肺症候群 | 肺炎、呼吸不全、呼吸困難通常発熱を伴う ※肺門リンパ節腫脹 |
吸入炭疽※、野兎病*、ペスト、ボツリヌス毒素、リシン、コクシジオド真菌症、クリミア−コンゴ出血熱、ウェルシュ菌毒素、ヒストプラスマ症、インフルエンザ、ハンタウイルス肺症候群(ARDS)、オウム病、Q熱、ブドウ球菌性エンテロトキシンB |
急死症候群 | 数分以内に死亡(発熱は併発かも) | 毒素(ボツリヌス、サキシトシン、テトロドトキシン、T2、その他)(化学剤) |
(米陸軍 生物剤疾患の医療対処 Ver1.4, 2001, 一部改編)
症状 | その他の症状・症候 | 可能性のある原因微生物(剤) |
下血 | 発熱(典型的) | 赤痢菌、キャンピロバクター、病原性大腸菌(O157:H7)、サルモネラ、ウイルス性出血熱 |
水様性下痢 | ときに発熱 | コレラ、ウイルス性出血熱、ブドウ球菌性エンテロトキシンB |
出血熱 | 発熱、発熱を伴う低血圧 | ウイルス性出血熱(アルゼンチン、ボリビア、クリミア−コンゴ、エボラ/マールブルク、デング熱、ラッサ熱)、黄熱病、ハンタウイルス性出血熱、リフトバレー熱(まれ)、ペスト、天然痘、トリコテセンマイコトキシン |
黄疸 | 発熱を伴うことあり | エボラ/マールブルク出血熱、黄熱病、ラッサ熱、トキシン(特にアフラトキシン) |
(米陸軍 生物剤関連疾患の医療対処 Ver1.4, 2001, 一部改編)
症状 | その他の症状・症候 | 可能性のある原因微生物(剤) | |
発疹 | 斑・丘疹状 | 全ての発疹症候群は典型的に発熱を伴う | ウイルス性出血熱(アルゼンチン、ボリビア、クリミア−コンゴ、エボラ/マールブルク、デング熱)、流行性腸チフス、オウム病(まれ)、ロッキー山紅斑熱、ツツガムシ病、鼻疽、類鼻疽、天然痘(早期)、野兎病(まれ) |
点状 斑状出血性 |
ウイルス性出血熱(アルゼンチン、ボリビア、クリミア−コンゴ、エボラ/マールブルク、デング熱、ラッサ熱)、黄熱病、ハンタウイルス性出血熱、オムスク出血熱、 リフトバレー熱(まれ)、流行性腸チフス、ペスト、ツツガムシ病、天然痘(まれ)、T2 | ||
小庖 膿庖性 |
野兎病、類鼻疽、天然痘 | ||
肉芽腫性 潰瘍性 |
野兎病、類鼻疽 | ||
頚部硬直 | 発熱を伴うのが典型的 | 東部/西部/ベネズエラ馬脳炎、ヒストプラスマ症、オウム病 |
(米陸軍 生物剤関連疾患の医療対処 Ver1.4, 2001, 一部改編)
疾患 | 化学療法 | 被曝後予防内服 | 代替薬・備考 |
天然痘 | 支持療法のみ シドフォヴィール(in vitroで有効)は動物実験中 |
ワクシニア 免疫グロブリン:0.6mL/kg(IM)(曝露後3日以内、1日以内が最善) |
曝露前後での種痘ワクチン |
炭疽 |
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治療にはRFP、CLDMなどを追加 GM、EM、CPが代替となりうる |
ペスト |
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野兎病 |
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ワクチンは国内になし |
ボツリヌス中毒 | 抗毒素(3〜5価)1Vial(10mL)(IV) | 馬抗毒素投与前には要皮膚テスト | |
ウイルス性出血熱 |
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低血圧・ショックに対する集中治療が重要 | |
受動免疫抗体(AHF/BHF/ラッサ熱/CCHF) |
(米陸軍 生物剤関連疾患の医療対処 Ver1.4, 2001, 一部改編)
など