シリア地方病院救急医療体制支援先遣隊の派遣

難民受入地域支援要請背景調査団2003年1月にシリア及びヨルダンに派遣した難民受入地域支援要請背景調査団(団長:乳井経協技企画官)の調査結果を受け、同調査のフォローアップのために企画調査員を両国に派遣し、更なる情報収集と、医療機材の供与及び専門派遣に関する正式要請書の取り付けを慫慂してきた結果、今般、シリア政府より、同国イラク国境に近いハサケ県所在のハサケ国立病院の救急医療体制の強化支援のための技術協力専門家派遣にかかる正式要請書のアドバンスが在シリア大を通じて外務本省に接到した。

対イラク武力行使が発生し、シリアに多くの難民が発生した場合には、これを対イラク周辺国支援の一環として技術協力(難民受入地域支援)として実施していくことを検討してきているが、武力行使が避けられなかった場合に備え、難民の発生を待つことなく、同地域の緊急医療体制の強化の支援に着手することは、難民発生後の円滑な協力実施に繋げるために極めて有意義であると考えられること、また、武力行使が避けられた場合或いは延期された場合であっても、同国地方部の救急医療体制の整備に対するニーズは従来極めて高く、協力が無駄となることはないと考えられることから、下記の通り、本件専門家派遣を早急に実施することと致したい。

シリア地方病院救急医療体制支援先遣隊ビデオ


専門家の分野、人数等(括弧内調整中の専門家氏名・所属)

  1. 医師1名(浅井康文 道立札幌医科大学救急集中治療部長(緊急援助隊支援委員会副委員長))
  2. 看護師2名(千葉陽子 元JOCV助産師、鈴木三和 神奈川県衛生看護学校付属病院)
  3. 薬剤師1名(荒井尚之 せきしば薬局)
  4. 業務調整1名(児島盛之 元JOCV調整員)計5名

なお、上記専門家派遣と同時期にJICA職員(中近東・欧州課 森代理)派遣し、専門家の活動内容等を再確認する。


派遣時期・期間

2003年3月21日(金)〜4月3日(木)

派遣先

救急医療体制を支援する対象病院としてハサケ国立病院(イラク国境から約42、アル・ホール難民キャンプ地の後方支援病院)

(参考)
科:内科、外科、整形外科、脳外科、泌尿器科等
病床数:一般250床、小児65床
医師数133名(専門医67名を含む)
看護師173名

派遣の意義

ハサケ県(人口約133万人)ハサケ市は、仮に対イラク武力行使が行われ、難民が発生した場合には、多くの難民が収容される予定のアル・ホール難民キャンプ(既存)に近い同国北東地方の中核都市である。
また、ハサケ国立病院は、アル・ホール難民キャンプ等同地方の難民キャンプで重症患者が発生した場合、その緊急移送先となることが想定される唯一の大規模な国立の総合病院である(91年の湾岸戦争時も、アル・ホール難民キャンプより重症患者がハサケ国立病院に移送され、緊急対応を行った実績がある)。

そもそもシリアの医療水準はあまり高くないといわれているが、ダマスカス等中央の大都市部と地方との地域間格差が顕著であり、ハサケ県等地方の医療体制は脆弱で、救急医療体制の整備に対するニーズは極めて高い。この点は、先の難民受入地域支援要請背景調査団によっても確認されている。
我が国は、これまでも同国の地方部の救急医療体制の強化のための支援を行ってきた実績があり、92年度及び93年度には、全国21の病院を対象とした無償資金協力「救急医療機材整備計画」を実施しており、今回、専門家の派遣先であるハサケ国立病院に対しても、92年度に救急車等医療機材が供与されている。
また、同病院の緊急医療部には、かつてJICAの本邦研修として実施した「救急・大災害医療セミナーに参加した帰国研修員が勤務している。
なお、「難民受入地域支援要請背景調査団(団長:乳井経協技企画官)」が同病院を訪問した際、我が国が同病院に供与した供与機材が有効に活用されていることを確認している。
但し、供与後既に10年を経ており、老朽化が始まっているため、新しい機材が欲しいとの要請があり、現在無償資金協力のフォローアップ(F/U)として追加的に医療機材の供与する方向で正式要請を取り付けているところである。

今回、本件専門家派遣により、技術協力としてハサケ国立病院の救急医療体制の強化のために必要な技術の移転と、技術移転に必要な機材を専門家の携行機材として供与(供与機材の内容は医薬品等を中心に検討中)する予定である。
平時である現時点においては、本件協力は、通常の二国間技術協力として実施するが、本件協力実施期間中に対イラク武力行使が発生し、多くの難民がシリアに流入するような事態となった場合には、我が国のイラク周辺国支援の一環としての「難民受入地域への技術協力」と位置づけることとする。

(参考)本件技術協力専門家派遣とPKO文民医療チームとの関係整理

内閣府国際平和協力隊事務局は、対イラク軍事行動が発生した場合、周辺国での難民支援として国際平和協力法に基づく文民医療チームをシリアに派遣することを検討している。文民医療チームは、その活動拠点として、ハサケ件アル・ホール難民キャンプを予定しているが、同難民キャンプは、本件技術協力専門家の派遣先であるハサケ国立病院の所在地と地理的に近接(約42、車で約1時間)しており、両者の活動時期も重なる可能性もありうるので、両者の関係を以下の通り整理しておくこととする。

両者の役割、目的は以下の通り明らかに異なるものである。

  1. 本件技術協力専門家(医師、看護師、薬剤師等)は、地方の救急医療体制支援の目的で、シリア人医療関係者をカウンターパートとして技術移転を行うものであり、患者に対して医療行為を行うことを一切想定していない。
  2. これに対し、PKO文民医療チームは、難民キャンプにおいて、イラクから難民に対し、診察、医療、投薬等医療行為を行うものである。

ありうべき両者の接点としては、本件技術協力専門家の派遣であるハサケ国立病院は、PKOの文民医療チームにとって、重症患者の移送先となる可能性が高いことから、緊急移送の際には、両者が連携・協力する場面が想定され得る。

ハサケ病院における救急医薬品衛生資材管理、エアーテント診療所について

エアーテント診療所について3月30日午前11時から当病院中庭にて病院職員、医師、看護師 約60名を対象にエアーテントの設置デモストレションを行った。
このエアーテントを膨らませるためには、電気の無い野外でもコンプレッサが始動出来るよう、30KVのジェネレータで試み,早急な救急時や移動診療所として少人数、短時間で完成し得るメリットを力説した。また白いテントはコンサルテーションとしキャンプ用テントは処置室、点滴室として利用し床は毎日消毒清掃しなくては、ならないのでブルーシートを敷き、コンサルテーションテントには診察用ベット、テーブル2個、椅子4個、またテーブル上には治療用の薬剤資材(G-1、G-2)のパッキンされた棚をセットアップし患者と医師、処置資材キットを実際に配置させてみた。
また前日、ハサケ病院の会議室でエマジェンシーBOX(ジュラルミンBOXで仕切り、段が無く、むやみに薬剤、処置用資材が乱雑に入っている)をテーマに病院スタッフとの討議をしたが、我々のパッキンシステムであるドクターズキットを展示させた方が具体的だと試みた、このキットは救急車に搭載させたり、難民キャンプで身動きの取れない患者への往診に活用し、また我々チームが移動する場合我々のためのドクターズキットでもあるので必ず携行している事を説明した。

3月27日13:00からal-holky難民キャンプUNHCR事務所前の駐車上で診療用エアーテント、処置、点滴用キャンピングテントの設置デモストレションを行う、このリクエストは3月26日にUNICEFの表敬訪問時に興味が示され、UNHCRの承諾を受け行ったものでal-holky難民キャンプで日本の国旗が各NGOより一番早く掲げた記念すべき事だったし。また、このエアーテントの設置にはUNHCR、UNICEF職員30名が見学し20分で完成し短時間で移動し易いことに非常に関心を受けた。
隣接に簡易用トイレを併設したがオマール方式で中東で受け入れられてくれるのか心配がある。
最後に病院のスッタフ、通訳、ドライバーの皆様と10日間過ごしましたが非常にフレンドリーで楽しく
また、この国の人達の気質がわが国の昔の結いを持っている事に感銘をうけた。